各部署から届いたExcelファイルを開く。A部署は項目が縦並び、B部署は列の順番が違い、C部署はシート名が去年のまま。マスター表に一つずつ貼り付けていくと、それだけで午前中が終わる。貼り終えた頃に「さっきのは古い版でした」と修正版が届き、どこまで反映したか分からなくなる——。
部署や拠点、委託先からExcelを回収している担当者なら、一度は経験がある場面だと思います。
この作業を軽くしたいとき、多くの人はまず「ファイルを1つにまとめる方法」を探します。それ自体は正しく、方法もいくつかあります。ただ、毎回同じ統合作業が発生しているなら、困りごとは2つに分かれています。
- データをまとめる:複数ファイルの行を1つの表に集める
- 集め方と確認をまとめる:誰に依頼し、誰が未回答で、どれが最新版で、誰が中身を確認したかを追う
前者はExcelの機能で解決できる場合があります。後者は、ファイルを結合するだけでは残ります。この記事では、前者の具体的な方法を3つ挙げたうえで、後者との境界の引き方を示します。
Excelをまとめる方法と、回収方法を変える選択肢
まず、複数ファイルを1つにまとめる方法を3つ挙げます。そのうえで、まとめても残る作業を確認し、最後に回収方法そのものを変える選択肢に触れます。
1. コピー&ペーストで結合する
もっとも単純なのは、届いたファイルを開いてマスター表に手で貼り付けていく方法です。
向いているのは、ファイル数が少ない、一度きりまたは頻度が低い、列構成が単純で揃っている、担当者が固定されている、といった場合です。数件を一度だけまとめるなら、仕組みを用意するより早く終わります。この方法自体を否定する必要はありません。
一方で、件数が増える、あるいは毎月・毎年繰り返すと、転記漏れや二重計上、修正版の反映漏れ、貼り付け手順が担当者しか分からなくなる、といった手戻りが起きやすくなります。回数が増えるほど、貼り付け作業そのものより、貼り間違いの確認に時間がかかるようになります。
2. Power Queryで結合する
Power Queryは、Excelのデータ取得・変換機能です。同じ形式のファイルが入ったフォルダーを指定すると、その中のファイルを1つの表にまとめて取り込み、次回以降は「更新」で取り込み直せます。
Microsoftの公式手順では、おおよそ次の流れです。
- 各ファイルの列名・列数・データ型を揃える(同じスキーマにする)
- 結合したいファイルだけを1つのフォルダーに入れる
- Excelの[データ]→[データの取得]→[ファイルから]→[フォルダーから]を選ぶ
- フォルダーを指定し、[結合と読み込み]などで取り込み方を決める
- 次回以降はフォルダーにファイルを追加し、[更新]する
前提として、各ファイルは列見出し・データ型・列数が一致した同じスキーマである必要があります。列の並び順は必ずしも同じでなくてかまいません。画面名やコマンドはExcelのバージョンで異なる場合があるため、実際の操作はMicrosoft公式情報で確認してください。
Power Queryが効くのは、同じ列構成のファイルが繰り返し届き、所定のフォルダーに置ける場合です。取り込み手順をクエリとして保存できるので、毎回の貼り付けは減らせます。ただし、誰が未提出かの管理、修正版の扱い、部署ごとに列やシート構成が変わったときの取り込みエラー、そして回答内容の確認や差し戻しは、取り込みとは別の作業として残ります。
3. 共有Excelやフォームに入力先を統一する
そもそも個別ファイルを返してもらうのをやめ、入力先を1か所にする方法もあります。共同編集なら、OneDriveやSharePoint上のExcelを共有し、複数人が同じブックを同時に編集します。フォーム(アンケート型の入力ツール)なら、回答を集めて1つの表に落とします。
主に社内のメンバーが回答し、全員が同じ入力欄を使え、ファイルやフォルダーの共有範囲と閲覧・編集権限を設計できる場合に向いています。入力先が1か所になれば、個別ファイルの返送と、その都度の貼り付けは減らせます。
一方で、単純化しないほうがよい点もあります。共有Excelは、誤編集の防止や入力範囲の設計が必要です。フォルダーを共有すると、共有相手はそのフォルダー内の内容を閲覧できる場合があります。回答者ごとに見せる範囲を分ける場合は、ファイルやフォルダーの共有範囲、編集権限を事前に設計する必要があります。フォームは回答を集めるのは得意でも、未回答者の特定、差し戻し、再提出、確認済みの管理まで標準機能だけで完結するとは限りません。
ファイルをまとめても残る作業
ここまでの3つは、いずれも「データをどう集めるか」を変える方法です。ただ、どの方法でも、ファイルを1つにできたあとに次の作業が残ります。
- 様式が違う:部署ごとに列名やシート構成が違い、取り込みや集計の前に手直しがいる
- 最新版が分からない:同じ部署から修正版が複数届き、ファイル名だけでは最新が判断できない
- 未回答が追えない:誰が未提出かを別の名簿で管理している
- 確認と差し戻しが要る:まとめたあとに、内容を確認し、不備を戻す作業が発生する
- 添付資料が散る:回答の根拠になる資料が、別フォルダやメールに分かれている
ファイルを結合しても、未回答の把握や催促、回収後の確認は別に残ります。これはPower Queryなどの弱点というより、データを集める道具に、回収管理や確認まで担わせようとしているのが原因です。
自社でどちらの負荷が重いかは、次の問いで見えてきます。
- 対象ファイルは毎回同じ形式か
- 一度きりか、毎月・毎年繰り返すか
- 回答者は何人・何社か
- 未回答者への催促が発生するか
- 修正版や差し戻しが発生するか
- 内容確認を複数人で行うか
- 過去の回答と確認履歴を残す必要があるか
- 添付資料も一緒に管理する必要があるか
単発・少数・同形式なら、Excelで十分な場合があります。負荷は件数だけでは決まりません。差し戻しの回数、確認する人の数、依頼の頻度、添付資料の有無が増えるほど、まとめたあとの手作業が重くなります。手作業の工数を先に測りたい場合は、Excelでのチェックシート管理にかかる人件費も参考になります。
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回収方法から変えるという選択肢
上の残る作業が重いなら、ファイルのまとめ方ではなく、回収のしかたそのものを変える選択肢があります。個別のExcelを集めて後から結合する代わりに、共通のチェックシートに回答してもらい、依頼先ごとの回答状況・回答内容・差し戻しを、同じ仕組みで扱う考え方です。
4つの選択肢を並べると、次のようになります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 主に変わる作業 | 残る課題・注意点 |
|---|---|---|---|
| コピー&ペースト | 少数・単発 | ファイル内容の集約 | 転記、版管理、未回答管理 |
| Power Query | 同形式・定期集計 | ファイル結合と更新 | 回収、催促、差し戻し、確認 |
| 共有Excel・フォーム | 入力先を統一できる | 個別ファイルの返送 | 共有範囲の設計、未回答の照合、差し戻し、確認 |
| 回収管理システム | 依頼から確認まで追いたい | 回収・催促・差し戻し・状況共有 | 初期設定、利用料金 |
上の3つは「データをどう集めるか」、最後の1つは「回収と確認の流れをどう回すか」に関係する選択肢です。Excel運用全体の限界を先に把握したい場合は、セキュリティチェックをExcelで管理する限界も合わせて読めます。
マモリスは回答依頼から確認までを一つの流れで管理する
回収管理システムの一例がマモリスです。汎用のExcel結合ツールではありません。個別ファイルを回収して後から結合するのではなく、共通のチェックシートへ回答してもらい、その状況と中身を同じサービス上で扱う位置づけです。
この記事で挙げた課題と対応づけると、次のようになります。
- チェックシートを作成し、複数の回答者へ依頼できる。→「同じ形式で集めたい」に対応
- 回答者はログイン不要のURLから、ブラウザで回答できる。→「取引先や他部署に依頼しやすくしたい」に対応
- 回答者は個別登録のほか、CSVで登録できる。→「依頼先が多い」に対応
- 依頼先ごとの未回答・回答内容・差し戻しを、一覧で確認できる。→「誰が未回答か分からない」に対応
- 期限前のリマインド送信や、未回答者へのまとめての催促ができる。→「催促を別で管理している」に対応
- 不備のある回答にコメントを付けて差し戻し、再提出を依頼できる。→「修正版の扱いが煩雑」に対応
- 過去のチェックシートや回答内容、差し戻しの状況を、同じサービス上で確認できる。→「過去の回答や差し戻し状況が分からない」に対応
- 定期的な確認では、繰り返し設定や、前回のテキスト・選択肢回答を初期値として引き継ぐ設定を使える。→「毎年同じ依頼が発生する」に対応
- 複数の管理者で状況を共有できるプランがある。→「担当者一人の受信トレイに依存している」に対応
行データを自動でまとめる集計ツールではなく、回答を集めて確認するまでの流れを1か所に置く、という点が、Power Queryや共有Excelとの違いです。
まとめ
部署ごとのExcelファイルを1つにまとめる方法は、目的に応じて選び分けられます。
- 少数・単発なら、コピー&ペーストで十分な場合がある
- 同じ形式のファイルを定期的に集めるなら、Power Queryが有効
- 入力先を1か所にすれば、個別ファイルの返送は減らせる
- まとめても、未回答・差し戻し・確認・履歴の作業は残る
- その残る作業が重いなら、集計方法ではなく、回答を集める入口から見直す
「Excelをやめるべきか」ではなく、「どの作業が重いのか」から考えると、自社に合う方法を選びやすくなります。
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よくある質問
Q1. 部署ごとのExcelファイルを1つにまとめる一番簡単な方法は何ですか?
ファイル数が少なく一度きりなら、コピー&ペーストがもっとも手軽です。同じ形式のファイルを繰り返し集めるなら、Power Queryでフォルダーごと取り込む方法が候補になります。件数や頻度で向き不向きが変わります。
Q2. Power Queryで複数のExcelファイルをまとめられますか?
できます。同じフォルダーに入れた同じ形式のファイルを1つの表に取り込み、次回以降は「更新」で取り込み直せます。ただし、未回答者の把握や差し戻し、確認の管理は、Power Queryの対象外です。
Q3. ファイルごとに列の並び順が違ってもPower Queryでまとめられますか?
列は列名で対応付けられるため、並び順が必ずしも同じである必要はありません。ただし、列見出し・データ型・列数など、基本的なスキーマが揃っていることが前提です。シートや表の構造が異なるファイルが混ざる場合は、取り込み設定の調整が必要になることがあります。
Q4. 共有Excelとフォームはどちらが向いていますか?
社内の少人数が同じ表を更新するだけなら、OneDriveやSharePointでの共同編集が向きます。多くの人から決まった項目を集めるなら、フォームのほうが集めやすい場合があります。どちらも、未回答者の特定や差し戻しまで標準機能だけで完結するとは限りません。
Q5. Excelの統合ではなく、回収方法を変えるか検討する目安は何ですか?
回答者が多い、依頼先ごとに分けて追いたい、催促・差し戻し・再提出が発生する、複数人で確認する、履歴を残す——このあたりが重なってきたときが目安です。データを集める作業より、回収と確認の流れのほうが重くなっているサインです。
