取引先や委託先に何を確認すればいいのか、決めかねていませんか。
社内で取引先評価チェックリストを作ることになったものの、項目をどこまで広げればよいか迷う、という悩みが出やすくなっています。
確認すべきことは、会社情報や契約内容だけにとどまらなくなりました。
個人情報の取扱い、セキュリティ対策、再委託の状況、生成AIの利用状況まで、見ておきたい項目が広がってきています。
さらに、Excelのチェックリストをメールで送って回収するやり方だと、誰に送ったのか、誰がまだ回答していないのか、どこを差し戻したのか、最後に誰が確認を終えたのかが、件数が増えるほど追いきれなくなります。
この記事では、取引先評価チェックリストの目的と、確認すべき項目の例、そして送付から確認までをどう進めるかを解説します。
総務、法務、情報システム、個人情報保護担当、Pマーク・ISMS担当、購買・管理部門の方が、社内でそのまま使えるよう、具体項目を多めに挙げています。
取引先評価チェックリストとは
取引先評価チェックリストとは、企業が外部の取引先や委託先を選定・継続する際に、契約内容、情報管理、法令遵守、セキュリティ、業務遂行体制などを確認するための項目をまとめたシートです。
似た言葉に「与信チェック」や「セキュリティチェックシート」がありますが、取引先評価はそのどちらか一つに収まるものではありません。
- 与信(支払能力・財務)だけを見るものではない
- セキュリティ確認だけを指すものでもない
- 取引を始める前の審査だけでなく、取引が続く間の定期確認や、状況が変わったときの確認にも使う
- すべての取引先に同じ深さで確認するのではなく、預ける情報や任せる業務の内容に応じて、確認する範囲を変える
セキュリティチェックシートそのものの位置づけや項目例を整理したい場合は、セキュリティチェックシートの目的や項目例もあわせてご覧ください。
取引先評価チェックリストが必要になる場面
取引先評価は「取引を始めるときの一度きりの審査」と思われがちですが、実務では、次の3つの場面で確認が必要になりやすくなります。
新規取引開始前
- 初めて業務を依頼する前
- 個人情報や機密情報を渡す前
- 新しいSaaSや外部サービスを導入する前
- 業務委託契約を結ぶ前
この段階では、相手がどんな会社で、どこまでの体制を持っているのかを、取引を始める前に把握しておきます。
年次・定期確認
- 以前確認した内容が、今も有効かを確かめる
- 担当者、再委託先、利用ツール、管理体制が変わっていないかを確かめる
- 監査や内部確認に備えて、確認した履歴を残しておく
一度確認すれば終わりではなく、時間が経つと前提が変わります。担当者が替わっていたり、新しいツールを使い始めていたりすることは珍しくありません。
変更時確認
- 委託する業務範囲が変わった
- 預ける情報の種類や量が増えた
- 再委託先が新しく追加された
- 生成AIや新しいSaaSの利用が始まった
- インシデントやトラブルが起きた
こうした変化があったときは、定期確認のタイミングを待たずに、その都度確認しておくと、後から「いつ何が変わったのか分からない」という状態を避けやすくなります。
取引先評価チェックリストで確認すべき項目
確認項目は、取引内容によって増減します。ここではカテゴリ別に、確認の目的と項目例を挙げます。自社の取引に合わせて、必要なものを抜き出して使ってください。
| カテゴリ | 確認目的 | 確認項目例 |
| 1. 会社・基本情報 | 取引先の実態や連絡先、責任者を把握する | 会社名、所在地、設立年、代表者、事業内容、取引担当窓口、業務責任者、請求・契約窓口、緊急連絡先、対象業務の実施場所、必要な許認可の有無 |
| 2. 契約・業務範囲 | 依頼する業務範囲と責任の分かれ目を明確にする | 業務内容、契約形態、秘密保持契約(NDA)の有無、成果物、納期、SLA、事故時の連絡条件 |
| 3. 情報管理・個人情報の取扱い | 個人情報や機密情報を適切に扱える体制かを確認する | 個人情報の取扱有無、機密情報の取扱有無、保管場所、アクセス権限の管理、廃棄方法、社内の管理体制 |
| 4. セキュリティ対策 | サプライチェーン上のセキュリティリスクを把握する | セキュリティポリシー、アクセス制御、多要素認証(MFA)、端末管理、ウイルス対策、脆弱性対応、ログ管理、従業員教育の実施状況 |
| 5. 再委託・外部委託 | 委託先のさらに先に業務や情報が渡るリスクを把握する | 再委託の有無、再委託先の名称、再委託時の事前承認、再委託先への監督方法、再委託先が変わった際の連絡 |
| 6. 法令遵守・コンプライアンス | 業務に必要な法令・規程・許認可を満たしているかを確認する | 関連法令の遵守体制、社内規程、教育、必要な許認可、過去の違反・行政処分の有無 |
| 7. 反社会的勢力排除 | 反社会的勢力との関係遮断に関する確認を取引先確認の一部として行う | 反社排除方針の有無、契約書の反社排除条項、自社内での確認の実施有無 |
| 8. 品質・納期・業務遂行体制 | 委託した業務を続けて遂行できる体制かを確認する | 担当体制、バックアップ要員、同種業務の実績、教育体制、納期遵守、品質管理の方法 |
| 9. インシデント・緊急時対応 | 事故やトラブルが起きたときに連絡・対応できる体制かを確認する | 緊急連絡先、報告期限、障害時の連絡フロー、情報漏えい時の報告体制、BCPの有無 |
| 10. AI・SaaS利用状況 | 業務で使うAIやSaaSを通じた情報漏えい・管理不備を防ぐ | 生成AIの業務利用有無、入力する情報の範囲、法人契約か個人アカウントか、入力データの学習利用設定、利用しているSaaS、把握していないツール利用(シャドーIT)への対応 |
いくつか補足します。
会社・基本情報は、相手の連絡先と責任者がはっきりすればまずは十分です。売上推移や代表者の経歴まで深く踏み込むと、与信調査に近づきすぎて、取引内容に対して過剰になりがちです。
セキュリティ対策は、ここで全部を見ようとすると項目が膨らみます。委託先のセキュリティをどこまで掘り下げるかについては、委託先セキュリティチェックで確認すべき具体的な項目で詳しく扱っています。
法令遵守・コンプライアンスは、自社だけで判断しきれない領域です。許認可や行政処分の有無といった事実は確認できますが、最終的な法的評価は法務や専門家に相談する前提で扱うのが安全です。
反社会的勢力排除は、取引先確認の一項目として、方針の有無や契約上の条項を確認する運用が考えられます。実際の確認は、自社の規程や専門サービス、外部専門家などを踏まえて行うものであり、チェックリストはあくまで「確認した事実と履歴を残す」ための手段です。
AI・SaaS利用状況は、委託先が業務で生成AIやSaaSをどう使っているかを把握しておく項目です。ここでは、利用の有無や入力する情報の範囲を確認するところから始めるとよいでしょう。委託先の生成AI利用をどこまで確認するかについては、別記事で詳しく解説します。
取引先評価の中でも、生成AIやAI搭載SaaSの利用状況は確認項目が増えやすい領域です。AI利用の有無だけでなく、入力する情報、利用サービス、契約形態、学習利用設定、再委託先での利用まで整理したい場合は、委託先のAI利用を確認するチェックリストで詳しく解説しています。
取引開始前・定期確認・変更時で見るべき項目は変わる
同じ取引先でも、確認するタイミングによって見るべきところは変わります。
| 確認タイミング | 主な目的 | 確認すべき項目例 |
| 新規取引開始前 | 取引を始めてよいかを判断する | 基本情報、契約範囲、個人情報の取扱い、セキュリティ、再委託、反社排除、法令遵守 |
| 年次・定期確認 | 前提が今も有効かを確かめる | 担当者の変更、管理体制の変更、再委託の変更、セキュリティ対策の変更、AI・SaaSの利用状況、インシデントの有無 |
| 変更時確認 | 変化に対応できているかを確かめる | 業務範囲の変更、取扱情報の変更、再委託先の追加、利用ツールの変更、事故発生後の是正状況 |
ここで大切なのは、すべての取引先に、毎回、同じ項目を確認する必要はないということです。預ける情報の重要度、任せる業務の重さ、想定されるリスクの大きさに応じて、確認する範囲を変えることが、続けられる運用につながります。
個人データの取扱いを委託する場合、委託元には委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます(個人情報保護法)。一方で、委託先の取扱状況の把握は必要とされているものの、立入検査のような確認が一律に義務付けられているわけではありません。委託先の選定や取扱状況の把握にあたっては、取り扱う個人データの内容や規模に応じた適切な方法をとればよいとされており、確認の深さを取引の中身に応じて変える考え方とも整合します。
Excelやメールで取引先評価を管理するときの注意点
件数が少ないうちは、Excelのチェックリストをメールで送る方法でも回ります。ただし、送付先や確認項目が増えてくると、次のような場面でつまずきやすくなります。
回答状況が追いにくい
誰に送ったのか、誰がまだ回答していないのか、どこまで確認が進んだのかが、メールと添付ファイルに分かれてしまい、全体像が見えにくくなります。
差し戻しや補足確認がメールに分散する
チェックリスト本体、添付資料、差し戻しのコメント、再回答が、それぞれ別のメールやフォルダに残ります。後から経緯をたどろうとすると、メールの履歴を遡る作業が発生します。
前回との差分が見えにくい
年次確認では、前回の回答と今回の回答を見比べたい場面が出てきます。Excelが年度ごとに別ファイルになっていると、どこが変わったのかを目で追う作業が重くなります。
確認履歴や判断の証跡が残りにくい
回答を受け取っただけで止まってしまい、誰がそれを確認済みにしたのか、どの項目はそのままでよいと判断したのかが、記録として残りにくくなります。後から「なぜこの取引先はこの状態で進めたのか」を説明しづらくなります。
回答者側の負担が増える
毎年ほぼ同じ内容を一から入力してもらうと、相手の手間が増え、回答の質や回収率に影響することがあります。
取引先評価を形骸化させない運用方法
チェックリストを送ること自体が目的になってしまうと、回答を集めただけで終わり、判断も履歴も残らない状態になりがちです。形だけにしないために、次の点を決めておくと運用が安定します。
確認の目的をはっきりさせる
何のために確認するのかを先に決めます。個人情報を預けるのか、機密情報を扱うのか、基幹業務に関わるのか。目的が決まると、必要な項目とそうでない項目が分かれます。
リスクに応じて項目を出し分ける
すべての取引先に同じシートを送るのではなく、高リスク・中リスク・低リスクで項目数や深さを変えます。重要な情報を預ける相手には詳しく、限定的な取引には絞って、というように調整します。
不備があったときの対応フローを決める
回答が不十分だったとき、誰が差し戻すのか。どの状態なら取引を始めてよいのか。どの項目は追加で確認するのか。ここを決めておかないと、回答が集まっても次に進めず、チェックリストが形だけになります。
定期確認と変更時確認を組み合わせる
年に一度の確認だけに頼らず、再委託の追加、AI・SaaSの利用開始、担当者の変更といった変化があったときには、その都度確認する運用にしておくと、前提のずれを早めに拾えます。
確認した事実だけでなく、判断も残す
「回答を受け取った」で止めず、「誰が確認したか」「どの項目を差し戻したか」「どのリスクをそのままでよいと判断したか」まで残しておくと、後から経緯を説明しやすくなります。取引先評価は、相手に過度な要求を押しつけるためのものではなく、自社が把握すべきことを把握し、判断の根拠を残すために行うものです。
サプライチェーン全体のセキュリティという点でも、こうした把握は実務上重要とされています。経済産業省・IPAのサイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0では、ビジネスパートナーや委託先等を含めたサプライチェーン全体の状況把握及び対策が、重要項目の一つとして挙げられています。
マモリスで取引先評価チェックリストを管理する方法
取引先評価チェックリストは、Excelでも作れます。ただし、送付先や確認項目が増えてくると、依頼、回収、差し戻し、再確認、確認済みの管理、証跡の保存が、別々の場所に散らばっていきます。
マモリスは、取引先評価チェックリストの作成から確認、保管までを、ひとつの流れとして進められるサービスです。前の章で挙げた課題に沿って、運用の流れを紹介します。
作成する:テンプレートをもとに、取引先評価や委託先確認に使えるチェックシートを作成できます。
依頼する:回答者を登録し、CSVでまとめて取り込むこともできます。回答者はログイン不要で、URLを開くだけで回答できるため、取引先や委託先に依頼しやすくなります。
回収する:誰が未回答かを含め、回答状況を一覧で確認できます。
確認する:回答が不十分なときは、差し戻しコメントを付けて再提出を依頼できます。確認済みの管理により、誰がどの回答を確認したのかを残せます。
繰り返す:繰り返し依頼と前回回答のプリセットにより、年次確認のたびに一から入力してもらう負担を減らせます。
残す:PDF保存により、確認した結果を保管できます。
こうして、取引先評価の運用が、依頼から回収、確認、再確認、保管までひとつながりになります。「回答は集まったのに、その後どう判断したかが残らない」という状態を避けるための運用基盤として使えます。リスクそのものをなくすものでも、法令対応や監査通過を保証するものでもありませんが、確認の経緯を残し、形骸化を防ぐ助けにはなります。
| まずはテンプレート一覧を見る マモリスでは、取引先評価・委託先確認に使えるチェックシートテンプレートを、無料プランから利用できます。 まずは、用意されているテンプレートの種類を確認してみてください。 ▶ まずはテンプレート一覧を見る |
まとめ
- 取引先評価チェックリストは、取引先や委託先のリスクを確認するための実務ツールです
- 確認項目は、会社情報、契約、個人情報、セキュリティ、再委託、法令遵守、品質、AI利用など多岐にわたります
- すべての取引先に同じ項目を送るのではなく、取引内容や預ける情報に応じて出し分けることが大切です
- Excelやメールでは、回収、差し戻し、前回との差分、確認履歴の管理が難しくなりやすくなります
- マモリスを使うと、チェックシートの作成から回答依頼、回収、差し戻し、確認済みの管理までを進められます
無料プランから使えるテンプレートは、無料プランから使えるチェックシートテンプレート一覧から確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 取引先評価チェックリストとは何ですか?
取引先評価チェックリストとは、企業が外部の取引先や委託先を選定・継続する際に、契約内容、情報管理、法令遵守、セキュリティ、業務遂行体制などを確認するための項目をまとめたシートです。
Q2. 取引先評価はいつ行うべきですか?
新規取引を始める前、年次・定期の確認、業務範囲や預ける情報が変わったタイミングなどで行います。
確認の頻度は、取引内容や預ける情報の重要度に応じて決めることが大切です。
Q3. すべての取引先に同じチェックリストを使うべきですか?
いいえ。個人情報や機密情報を預ける取引先、基幹業務に関わる委託先などは詳しく確認し、リスクが低い取引先は項目を絞るなど、リスクに応じて出し分けることが大切です。
Q4. Excelで取引先評価チェックリストを管理しても問題ありませんか?
件数が少ないうちはExcelでも管理できます。
ただし、送付先が増えたり、差し戻し、年次確認、前回との差分確認が必要になったりすると、回答状況や確認履歴の管理が難しくなりやすくなります。
Q5. マモリスでは取引先評価チェックリストをどのように管理できますか?
マモリスでは、テンプレートを使ってチェックシートを作成し、回答依頼、回収、差し戻し、確認済み管理まで進められます。
繰り返し依頼や前回回答のプリセットを使うことで、年次確認の負担も軽くなります。
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