チェックシートやチェックリストを作ろうとするとき、多くの人はまず「どんな項目を並べるか」から考え始めます。ネット上のテンプレートを探してきて、自社に合わせて少し手を加える、という進め方も珍しくありません。
なお、チェックリストとチェックシートは、厳密に使い分けられているわけではありません。チェックリストは「確認すべき項目を漏れなく見るための一覧」、チェックシートは「回答内容や判断理由を記録する用紙」として使われることが多いですが、実務では区別せずに使われる場面も多くあります。この記事では、どちらの意味も含めて扱います。
チェックシートを作るときの手順を大まかに並べると、次のようになります。
- 何を判断するためのチェックかを決める
- 設問の粒度を決める
- YES/NOだけでなく、補足や資料提出の形式を決める
- 誰が回答するかを想定して言葉を整える
- 回収後の確認・差し戻し・記録方法まで設計する
それぞれの考え方を見ていきます。
「何を判断するためのチェックか」を先に決める
チェックシートを作る最初の一歩は、項目を書き出すことではなく、「このチェックで何を判断したいか」を決めることです。
新規取引先を受け入れるかどうかの判断なのか、既存の委託先を継続するかどうかの確認なのか、社内の運用が基準を満たしているかの点検なのか。目的によって、必要な設問も、厳しさの基準も、確認すべき相手も変わります。
目的が曖昧なまま項目を集めると、「念のため聞いておく」設問が増えていきます。結果として、回答者の負担が増えるわりに、確認する側が本当に見たい情報は埋もれてしまいます。
設問の粒度を決める
目的が定まったら、次は設問の粒度です。粒度とは、1つの設問でどこまで細かく聞くか、という単位の話です。
「情報管理体制はありますか」という1問にまとめると、回答はYESでもNOでも判断材料として弱くなります。
管理体制の何を指しているのか、回答者によって解釈が分かれるためです。
これを、
- 情報管理の責任者は決まっているか
- アクセス権限の付与・変更・削除の手順はあるか
- 退職者や異動者の権限を見直しているか
のように分けると、それぞれの回答から次に何を確認すべきかが判断しやすくなります。
一方で、細かく分けすぎると、今度は設問数が膨れ上がり、回答者の負担が大きくなります。
目安としては、「その設問1つの回答だけで、次に何をすべきか判断できるか」を基準にするとバランスが取りやすくなります。判断できないなら、粒度が粗すぎる可能性があります。
YES/NOだけで終わらせない設問設計
チェックシートというと、YES/NOで埋めていく形式を思い浮かべやすいですが、YES/NOだけでは判断材料として不十分な場面が多くあります。
「対応している」というYES回答だけでは、対応の中身や範囲までは分かりません。
備考欄や補足説明の欄をあわせて用意しておくと、回答の背景や条件を残しやすくなります。特に、条件付きでYESとするような項目には、理由や状況を書ける欄が欠かせません。
設問の性質に応じて、回答形式を使い分けることも重要です。単一選択、複数選択、自由記述、日付入力、数値入力、資料添付など、聞きたい内容に合った形式を選ぶことで、回答者は答えやすくなり、確認する側も情報を扱いやすくなります。
添付資料の提出を求める設問がある場合は、資料をどう受け取るかも設計段階で決めておく必要があります。ファイル添付ができる形にしておかないと、後からメールで個別にやり取りすることになりがちです。
誰が回答するかを想定して作る
設問を作る際、見落とされやすいのが「誰が答えるか」という視点です。
情報システム部門の担当者が答える前提で作った専門用語混じりの設問を、委託先の営業担当や総務担当が受け取ると、意図が伝わらないまま回答されてしまうことがあります。
逆に、平易な言葉に寄せすぎると、専門的な判断が必要な項目で正確な回答が得られなくなる場合もあります。
回答者が誰になりそうかを具体的に想定し、その人が迷わず答えられる言葉で設問を作ることが、後の確認作業の負担を左右します。
Excelで作る場合の注意点
チェックシートやチェックリストは、Excelで作られることが多いツールです。列を追加しやすく、項目の修正もしやすいため、最初に作る形式としては扱いやすい方法です。共有環境を整えれば、複数人で編集することもできます。設問数が少なく、回答者・確認者ともに少人数で、添付資料や差し戻しがほとんど発生しないのであれば、Excelでも十分に機能します。
一方で、以下のような場面では、Excel運用に負荷がかかりやすくなります。
- 回答者の人数が多く、誰がまだ回答していないかを都度確認する必要がある
- 添付資料を求める設問があり、資料をファイルとメールで別々に管理している
- 差し戻しが発生し、修正版とのやり取りが複数回にわたる
- 年次や定期的な更新があり、前回の回答と見比べる必要がある
- 確認済み・要確認・差し戻し中といった状態を、複数人で共有しながら管理する必要がある
これらは、Excel自体の機能が足りないというより、ファイルのやり取りと状態管理を人が手作業で追い続けることに負荷がかかる、という話です。設問設計がどれだけ良くても、運用の段階でこの負荷は残ります。
作成した後の運用まで見据えて設計する
チェックシートは、作って配布した時点では完成していません。回収し、内容を確認し、必要であれば差し戻し、最終的な判断を記録するところまでが一連の業務です。
作成段階で「回収後にどう確認するか」まで考えておくと、後工程がスムーズになります。例えば、確認者が見るべき優先度の高い設問を意識して並び順を決める、判断の理由を残す欄を最初から用意しておく、といった工夫です。
こうした運用面の設計は、マモリスのようなチェックシート運用管理ツールでは、設問グループでの整理、設問ごとの必須設定、備考欄の追加、ファイル添付欄の設定として、あらかじめ組み込みやすくなっています。回収後も、差し戻しコメントを残す、確認済みのチェックを付ける、前回の回答を参照しながら定期確認を進める、といった形で運用を続けやすくなります。ただし、道具を変えても、目的の整理や粒度の設計といった考え方そのものは変わりません。
まとめ
チェックシート・チェックリストの作り方は、項目を並べる作業ではなく、目的を決め、設問の粒度を整え、回答者を想定し、運用まで見据えて設計する一連の作業です。
Excelでの作成は、少人数・小規模であれば十分に機能します。ただし、回答者が増える、添付資料が絡む、差し戻しや定期更新が発生する、状態管理が必要になるといった場面では、人が手作業で追い続ける負荷が大きくなっていきます。
運用面でつまずきやすいポイントは、チェックシート業務の落とし穴でも扱っています。
ゼロから作るのが難しい場合は、無料で使えるチェックシートテンプレートを参考にしながら、自社の目的に合わせて項目を見直す方法もあります。
よくある質問
Q1. チェックシートとチェックリストは何が違いますか?
A. 明確な使い分けはありませんが、チェックリストは項目の有無を確認する簡易な一覧、チェックシートは判断理由や補足を含めた確認記録という意味合いで使われることが多いです。
Q2. 設問数はどれくらいが適切ですか?
A. 目的や確認対象によって異なります。目安としては、1つの設問で次の判断ができるかを基準にします。判断に使えない設問は粗すぎる可能性があり、逆に確認に使わない項目まで増えている場合は細かすぎる可能性があります。
Q3. Excelで作ったチェックシートを、後からツールに移すことはできますか?
A. 可能です。ただし、既存の項目をそのまま持ち込むのではなく、運用の中で不要になった項目を見直す機会として使う方が、結果的に扱いやすくなります。
Q4. チェックシートを作るとき、テンプレートをそのまま使ってもよいですか?
A. 最初のたたき台としては有効です。ただし、自社が何を判断したいのかに合わせて、不要な項目を削ったり、必要な設問を追加したりする調整は必要になります。
Q5. 回答後の確認欄は必要ですか?
A. 必要です。回答を回収するだけでは、確認結果や判断理由が残りません。確認済み、要確認、差し戻しなどの状態や、判断理由を残せる欄を用意しておくとよいです。
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