チェックシートを作ろうとして最初に手が止まるのは、「何を項目にすればよいか」という点です。テンプレートを開いても、そのまま自社の判断に使えるとは限らず、どこを削りどこを足すか迷います。
なお、チェックリストとチェックシートは、統一された使い分けがあるわけではありません。この記事では、白紙の状態から1枚のチェックシートを設計し、回収して確認するところまで進める手順を扱います。両方の呼び方を含めて説明します。
チェックシートとチェックリストの違い
呼び方の使い分けから確認します。
チェックリストは、確認する項目を漏れなく見るための一覧として使われます。チェックシートは、回答した内容や判断理由を書き留める様式として使われます。ただし実務では、この2つは名称を区別せずに使われる場面も多くあります。
品質管理では、QC七つ道具の一つとして、データを集めて記録するための様式を「チェックシート」と呼ぶ文脈があります。品質管理での使われ方は、品質管理チェックシートとは?で詳しく解説しています。
名称だけで用途を決めず、何を確認し、何を記録する様式なのかを先に確認します。この記事でも、両方をまとめて「チェックシート」と呼んで進めます。
チェックシートを作る5つの手順
先に項目を書き出してしまうと、目的とずれた設問が混じり、後から作り直す手間が増えます。順番として先に決めるのは、次の5つです。
| 手順 | 決めること | 完成時に決まるもの |
|---|---|---|
| 1 | 目的と判断 | 何のためのチェックか |
| 2 | 対象と回答者 | 誰が何について答えるか |
| 3 | 確認項目 | 何を聞くか |
| 4 | 回答形式 | 選択・記述・資料など |
| 5 | 回答後の扱い | 確認・差し戻し・記録 |
順番に見ていきます。
1. 何を判断するためのチェックか決める
最初にすることは、項目を書き出すことではありません。まず「このチェックで何を判断したいか」を決めます。「何を確認するか」だけでなく、「回答を見て何を判断するか」まで決めておきます。
たとえば「安全管理を確認する」だけでは、何を見れば判断できるのかが定まりません。「作業を始める前に、安全管理の責任者と緊急時の連絡先が決まっているかを判断する」ところまで具体化すると、必要な設問が見えてきます。
目的が曖昧なまま項目を集めると、「念のため」の設問が増えます。結果として、回答者の負担が増えるわりに、確認する側が本当に見たい情報は埋もれます。
2. 誰・何を確認するか決める
次に、誰が何について答えるのかを決めます。ここでは3つを分けて考えます。確認の対象(何について確認するのか)、回答者(実際に入力する人)、確認する側(回答を見て判断する人)です。
同じ設問でも、現場の担当者と管理部門とでは、答えられる範囲が違います。現場にしか分からないこと、管理部門でなければ答えられないことを取り違えると、回答が集まっても判断には使えません。
回答者が誰になりそうかを具体的に想定し、その人が迷わず答えられる言葉を選びます。専門用語に寄せすぎると委託先の担当者に伝わらず、平易にしすぎると専門的な判断に必要な精度が落ちます。
3. 判断できる単位まで項目を分ける
1つの設問で聞く範囲は、回答から次の行動を判断できる単位まで分けます。悪い例と修正例で見ます。
「情報管理体制は整っていますか」という1問は、YESでもNOでも判断材料として弱くなります。管理体制の何を指すのか、回答者によって解釈が分かれるためです。これを、
- 管理の責任者は決まっているか
- 権限の付与・変更・削除の手順はあるか
- 定期的に権限を見直しているか
のように分けると、回答ごとに次へ確認すべきことが決まります。
別の分野でも同じです。設備の点検であれば、「点検はしていますか」という1問より、「前回の点検日はいつか」「異常時の連絡先は掲示されているか」と分けたほうが、回答から状況を判断できます。
分けすぎると設問数が膨らみ、回答者の負担が大きくなります。「その設問1つの回答で、次にすべきことを判断できるか」を目安にすると、粗さと細かさのバランスを取りやすくなります。
4. 項目に合った回答形式を決める
項目が決まったら、それぞれに合った回答形式を選びます。単一選択、複数選択、短い記述、長い記述、ファイルの添付、URLの入力など、聞きたい内容によって答えやすい形式は変わります。
チェックシートというと、YES/NOで埋めていく形を思い浮かべますが、YES/NOだけでは回答の中身や範囲までは分かりません。「対応しています」というYESの背景に何があるのかは、補足の記述欄や、根拠となる資料の提出をあわせて求めることで残せます。条件付きでYESとする項目には、その条件を書ける欄を用意します。
どれか1つの形式が常に最適というわけではありません。判断に必要な情報が何かを先に決め、それを引き出せる形式を選びます。
5. 回答後の確認方法まで決める
最後に、回答が集まった後の扱いまで、作成の段階で決めておきます。
- 誰が回答を確認するのか
- どの回答が出たら追加で確認するのか
- 不足があったとき、どう回答者に戻すのか
- 判断した理由をどこに残すのか
- 次回の確認時に、何を参照するのか
ここまで決めておくと、回収してから慌てずに済みます。確認する側が見るべき優先度の高い設問を前に置く、判断理由を書く欄を最初から用意しておく、といった設計は、この段階で入れておきます。
こうした回収後の設計は、道具によっては最初から組み込みやすくなります。たとえばマモリスでは、設問グループ、設問ごとの必須設定、選択肢の備考欄、ファイル・URL形式の設問を設定できます。回答者向けには、記入例や参考資料(URL・ファイル)を用意できます。回収後は、回答内容の確認、確認済みチェック、コメントを残した差し戻し、再提出、回答や確認の履歴管理まで扱えます。ただし、道具を変えても、目的の決め方や粒度の設計という考え方そのものは変わりません。
無料・登録不要・約3分
チェックシート運用の状況を診断します
記事の話を自社の運用に置き換えると、どのあたりに当てはまるでしょうか。回答は集まっているか、集まったあとの確認まで追えているか、その記録が残っているか。こうした点を 10 問で確かめる診断を用意しています。登録は不要で、3 分ほどで終わり、結果はその場で表示されます。
項目を作るときの具体例
ここまでの手順を、1つの例で通してみます。これは設計の進め方の例であり、特定の法令や認証の要件ではありません。
テーマ:外部の会社に業務を依頼するときの連絡体制
まず、このチェックで判断したいことを決めます。ここでは「問題が起きたときに、連絡先がすぐ分かる状態になっているか」を判断したいとします。
判断したいことが決まると、聞くべき項目が見えてきます。
- 担当の責任者は決まっているか
- 緊急時の連絡先は登録されているか
- 担当が変わったときの更新方法は決まっているか
回答形式は、選択肢に補足欄を組み合わせます。「決まっている/決まっていない」に加えて、決まっている場合は誰が担当か、どこに連絡先を控えているかを書ける欄を添えます。
回答後の扱いも決めておきます。連絡先が未登録なら追加で確認する、担当者の欄が空欄なら差し戻す、といった具合です。
このように、曖昧なテーマを「判断したいこと → 項目 → 回答形式 → 回答後の扱い」の順に落としていくと、項目は結果として決まります。
作ったチェックシートを試して見直す
チェックシートは、一度作って終わりにするより、配る前に一度試すと精度が上がります。実際に回答する立場の人に、数問でも答えてもらうと、次のような点が見えてきます。
- 意味が分かりにくい項目
- 同じことを聞いている重複した項目
- 回答は集まるものの、判断には使っていない項目
- 補足の説明が足りず、答えに迷う項目
最初から完成版を目指さず、試して直す前提で作ると、運用に入ってからの手戻りが減ります。
Excelで作る場合に決めておくこと
チェックシートは、Excelで作られることも多い様式です。列の追加や項目の修正がしやすく、共有環境を整えれば複数人で編集できます。設問数が少なく、回答者・確認者ともに少人数で、添付資料や差し戻しがあまり発生しないのであれば、Excelで十分に運用できます。
Excelで運用する場合は、操作の手順よりも、次の点を先に決めておくと管理が安定します。
- 誰が原本を持つか
- 回答ファイルの名前の付け方
- 添付資料の保管場所
- 回答状況(誰が未回答か)の管理方法
- 修正版の扱い
- 前回の回答の保管場所
回答者や添付資料が増え、差し戻しや定期更新が重なると、ファイルのやり取りと状態の管理を手作業で追う負荷が大きくなります。これはExcelの機能の問題というより、件数や運用の条件によって変わる部分です。
テンプレートを使う場合
ゼロから設計するのが難しい場合は、既存のテンプレートをたたき台にする方法もあります。ただし、テンプレートをそのまま使うと、自社が判断したいことと合わない項目が残ります。目的、確認する対象、判断の基準に合わせて、項目を足したり削ったりして調整します。
用途別のテンプレートを探す場合は、無料で使えるチェックシートテンプレートを参考にしてください。
まとめ
チェックシート・チェックリストの作り方は、項目を先に並べる作業から始めません。
- 何を判断するためのチェックかを決める
- 誰が何について答えるかを決める
- 判断できる単位まで項目を分ける
- 項目に合った回答形式を決める
- 回答後の確認方法まで決める
この順で決めていくと、設問は結果として決まります。作った後は、配る前に試して見直すと、運用に入ってからの手戻りが減ります。
Excelでの作成は、少人数・小規模であれば十分に機能します。回答者が増え、添付資料や差し戻し、定期更新が重なる場面では、状態管理の負荷が課題になります。運用面でつまずきやすい点は、チェックシート業務の落とし穴でも扱っています。
マモリスは、Excelやメールでやり取りされていた
チェックシートの登録、配布、回収、管理を
すべてオンラインで完結させるクラウドサービスです
よくある質問
Q1. チェックシートとチェックリストは何が違いますか?
A. 明確な使い分けはありません。チェックリストは項目を漏れなく見るための一覧、チェックシートは回答内容や判断理由を含めて記録する様式、という意味合いで使われることが多いです。品質管理の分野では、データを集める様式として「チェックシート」が使われます。呼び方より用途で見て差し支えありません。
Q2. 設問数はどれくらいが適切ですか?
A. 目的や確認する対象によって変わります。目安は、1つの設問の回答で次の判断ができるかどうかです。判断に使えない設問は粗すぎる可能性があり、確認に使わない項目まで増えている場合は細かすぎる可能性があります。
Q3. YES/NOだけの設問でもよいですか?
A. YES/NOで足りる項目もありますが、それだけでは回答の中身や範囲が分かりません。補足を書く欄や、根拠資料の提出をあわせて用意しておくと、確認する側が判断しやすくなります。
Q4. Excelで作ってもよいですか?
A. 少人数・小規模で、添付資料や差し戻しがあまり発生しないのであれば、Excelでも十分に運用できます。回答者が増える、添付資料が絡む、差し戻しや定期更新が発生する場面では、状態管理の負荷が大きくなります。
Q5. テンプレートをそのまま使ってよいですか?
A. 最初のたたき台としては使えます。ただし、自社が何を判断したいのかに合わせて、不要な項目を削り、必要な設問を足す調整は必要です。
